はりまや橋に近い高知市の中心街に「村岡カメラ店」があった。
 私の行きつけの店であった。当時の天体写真のD.Pはほとんど、ここで処理していた。若い30歳代の夫婦が経営していたが、主人が早く亡くなり、あとは残された奥さんが経営していた。

 ある日天体写真の現像を受け取りに行くと、年取った番頭さんがいて、「この店に星の好きな小学生がいます」と言った。私は会ったことはなかったが、せっかく通っているお店の事だと思って、訪れるたびに、天文の本や、私の書いた参考書を置いてきた。その星の好きな少年というのが、のちの軌道計算の大家に育つ「村岡健治」君であった。

 1976年だった。店を訪れると、当時中学校に通っていた「門田健一」君がきていた。村岡氏と懇意であった。今では「星ナビ」の編集者の一人の門田氏である。
 折から、暁の空に華やかに君臨している「ウエスト彗星」を高知空港付近まで自転車で通って撮影した、という見事な赤い朝焼けの中に輝く、彗星のカラースライドを分けてくれた。このカラー写真は、私のホームページに重要な写真として使わせてもらっている。のちに世界的な彗星の位置観測者になる門田氏の記念すべき第一号の彗星写真である。高知城下にあった小さなカメラの店から、実に世界的な星の人物が二人育ったことになる。

 その頃、村岡君も成人して、高知大学の天文部の生徒たちを相手に、天文活動に熱中していた。そのうちに私の本の影響で彗星の軌道に興味を示すようになり、自ら「彗星位置予報集」を毎年計算して発行するようなった。1987年にスミソニアンのマースデン博士が来たとき、その本を献上した。いまや独学で、世界屈指の軌道計算者に成長したのは見事であった。その陰には「軌道計算の楽しみ」と題した、いまは幻の全5巻シリーズの”虎の巻”が存在したのである。

(1976年3月、暁の空に現れたウエスト彗星。天高く昇る3本の尾が印象的であった。)
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