「イケヤ・セキ彗星」が出現してから10年。再び暁の空に大彗星が現れて多くの人を驚かした。1976年のウエスト大彗星である。前に紹介した高知の”彗星3羽からす”の一人である門田健一氏が出会った最初の大彗星でもあった。

 門田氏は、その後埼玉県に移ったが、今では日本を代表する彗星の観測者になった。その陰には計算者としての村岡健治氏の協力が欠かせないものであった。彗星の観測には、その光度と形状を観測する、いわゆる物理観測と、彗星の描く位置を精密に測定する観測とがあるが、門田氏は、その後者の方である。正確さと、数の多さは断然群を抜いていた。

 昔OAAの重鎮で、彗星の精密観測は専門家が行うものであって、設備や知識に欠けるアマチュアのやるべきことではない、と言った人がいたが、今や世界的に見てもアマチュアの協力なしには成り立たないほど、彗星や小惑星の発見は増加しているのである。「世界のアマチュアの参加を歓迎する」と言ったスミソニアンのマースデン博士の言葉は、正解であった。

 いま芸西では多くの彗星の精密位置観測を続けている。村岡氏亡き後は、福島県の佐藤裕久氏が踏襲し、多くの彗星の軌道計算に貢献しているのである。毎年発行されている「彗星年表」は村岡氏の後を受けて佐藤氏が計算し、半世紀も続いている。

(朝焼けの中に輝くウエスト彗星。1976年3月、門田健一氏撮影)
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