今から遠く1928年に彗星(クロムメリン)を発見した、山崎正光氏の声が実に61年ぶりに再現しました。古い録音テープは私の本棚の片隅から最近発見されたもので、元・石垣島天文台長の宮地竹史氏が、今のCDに吹き替えました。新しいCDのデザインは、20cmコメットシーカーの横に座る山崎氏(1954年頃)と、彗星発見によってアメリカの太平洋天文学会から授与されたドノホーメダルです。録音は1957年頃高知県佐川町九反田の、山崎さんの実家で行われたもので、このころ山崎さんは、昔水沢で使っていた望遠鏡で捜索をしていました。私はその頃、山崎さんの家に足繁く通って天体軌道論の勉強をし、28年ぶりに帰ってくるクロムメリン彗星の摂動計算を共にやっていました。

 周期28年のクロムメリン彗星は木星や土星の顕著な摂動を受けずに、28年昔の発見位置に近い獅子座の中で私が発見しました。それは私自身が計算した位置予報のすぐそばで、大英天文協会の発表した予報の10度も北でした。しかしその一週間前にチェコスロバキアでの発見が報じられ、私の発見は独立発見となりました。録音はその1年後で、間もなく山崎さんは逝去されました。28年ぶりに彗星と再会できた喜びは大きかったと思います。

 録音には山崎さんと同期で、元・京都大学の花山天文台長だった山本一清氏の声も入っています。火星が接近した1958年頃で、その1年後に逝去されていますからこれも大変貴重な録音といえます。東亜天文学会の初代会長で、私が9代目の会長をを務めたのも不思議な縁です。
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