もう20年も昔になるでしょうか。高知市の上町の私の家に集まった彗星三人組です。向かって右の端の村岡健治君は彗星軌道計算の大家で、家は市内の繁華街で両親が写真屋をしていました。
 
 そこにまだ中学生だった門田健一君が写真を受け取りにやってきました。私と初対面です。その時くれた写真というのが、かの有名な1976年3月のウエスト大彗星で、なんでも自転車で高知龍馬空港に近い海岸に行って撮影したものだそうです。朝焼けの空に浮かぶやや曲がった尾の彗星は特別に美しく、その後私のHPに使わせてもらっています。
 
 その後門田さんは関東地方に移動し、今では「星ナビ」の編集に携わりながら彗星の観測をやっていることはご存知の通りです。観測は極めて正確で断然多く、村岡さんは彼の観測から多くの軌道計算をしました。しかし、ご両親も本人も短命で、志半ばでこの世を去られたことは残念です。

 それから何年かたって妙な事件が起こりました。芸西村の天文台で観測の作業をしているときに何者かがドアをノックします。「どなたですか?」と聞くと低い声で「ムラオカです」と答えました。しばらくして観測を中断して、そっとドアを開けると、誰も居ません。(空耳だったのか?)そこには星空につながるような深い暗闇があるばかりです。

 村岡さんは小さい時から何かにつけ私が面倒をみてきました。彼は誰よりも私を慕っていました。度々天文台にもやってきました。かってウェスト彗星が3本の尾を見せて輝いた東の森の上には、冬のオリオン星座が登ろうとしていました。

(写真は向って右から村岡健治、関勉、門田健一)
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