拙著「未知の星を求めて」のファンレターの第二号は、東京の新宿に住む青山神春(かみはる)という若き女性からであった。彼女は高校を卒業して、すぐに新宿のある会社に勤めた。美しい性格の持主で、汚れた環境の中で、精一杯清らかに生きようとした。そんな中で出会ったのが、本屋の片隅で発見した「未知の星を求めて」であった。彼女からは書評のような手紙が届き、また詩のような美しい文がつづられていた。

 ある夏の朝早く起きると、庭に朝顔が咲いていた。清らかな朝の空気の中でのみ咲く花を尊いと思った。深い紫色の花びらの色に、故郷の紀州で見た、遠い海の色を聯想したという。彼女の父は天文学であった。病床にあって死ぬ数日前まで、天文の論文を書いていたという。1966年に、初めてしし座流星群を見たことや、接近中の火星の赤い色に感動したというようなことが書かれ、彼女にとって、私と共に天体に憧れることが唯一の生き甲斐となっていた。

 こうして数年の歳月が流れた。突然彼女からの手紙が絶えた。最後の手紙には、いつの日にか高知を訪ねたいという意思がしたためられてあった。その頃多くの読者からの手紙が届いたが、第一号の日谷さん以外に会った人はいなかった。思えば星と私に大変な情熱を燃やしていた「神春」の事である、このままで永遠に消え去るとは思えなかった。それから何事もなく、何年かの歳月が流れたある日、驚くべき奇怪な事件が起こったのである。

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