1986年頃だったでしょうか。観測のメモが失われて詳しい事はわかりませんが、私の写真アルバムに、正に天の北極点に佇む一つの彗星がありました。その頃、芸西の主力機であった60cm反射望遠鏡を向けました。正しい天の北極点でモータ—を停めて、10分間の静止撮影を行いました。

 写真左下の輝星は2等星の北極星です。画面中央の、ほとんど静止している微光星が真の北極点です。ここに白い矢印で示した彗星が潜んでいるのです。日周運動で流れていないので、ほんのりとして、彗星らしく光っています。光度は17等位でしょうか。こうして見ると60cm鏡のピントは実にシャープで良い映像です。

 五藤製の鏡は温度で変化しにくいセラミック材を使って、極めて入念に研磨されました。国内の最高の技術者や光学の専門家が協力して作りあげました。この反射鏡は芸西に据えられて、1980年から約30年間にわたって多くの小惑星の発見や、ハレー彗星の観測等、重要な役目をこなしました。しかし新時代の到来もあって、惜しまれながら2010年に引退しました。私はこの優秀な鏡面はそのまま残して、駆動装置のみ今のCCDに対応した改造をすれば、費用も安く一番良い方法だと考え提案しましたが、行政ではそうはいかなかったようです。今までのしきたりに捉えられて、本当の良い方法が選択されなかったことに、残念が残ります。

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