1986年の3月だった。赤道直下のバリ島にわたった。1910年以来、76年ぶりに回帰したハレー彗星を見るのがその目的だった。 バリのホテルについた初日、広大な庭で、華やかな宴会が行われているさなか、わたしはそっと抜け出して、すぐ南の海にむかった。空はやや薄雲があっ ...
2022年02月
シリウスとカノープス
1986年3月。バリ島で見た全天第一のおおいぬ座のシリウスと、りゅうこつ座のカノープスです。椰子の枝の間に見えています。明らかに右のシリウスが明るいのですが、カノープスも負けてはいません。バリには、ハレー彗星を見にやってきたのですが、日本から見えない南天の星 ...
竜馬の小惑星
幕末の志士「坂本龍馬」の小惑星は、芸西に60cm反射望遠鏡が完成してから間もなくの1982年11月20日の発見である。(2835)Ryomaとして登録された。60cmの反射望遠鏡を北に向かって10分ずつ移動露出し、4回撮影した。周囲の星は綺麗に縦に整列するが、もし彗星や小惑星のよ ...
軌道計算三羽からす
ここは天下の桂浜である。坂本龍馬の銅像の前に立つマースデン博士ら3人である。 幕末の鎖国の日本にあって、海援隊を組織し、新しい国に憧れて海洋に乗り出していった龍馬。天体の軌道計算において、初めて彗星の非重力効果を算入して新しい分野を開拓していったスミソ ...
思い出のコメットハンター
オーストラリアのアデレイド近郊のブラッドフィールド氏は、老練の優れた彗星の捜索者だった。1992年に第一号の彗星(C/1972 E1)を発見した時には40歳を過ぎていた。これについてOAAの長谷川氏は、「若い人ならすぐ辞める人もいるが、ある程度年を重ねているから怖い」と言 ...
クロイツ族彗星の謎(3)
バーナード博士の彗星 アメリカの天文学者バーナードは若いころはコメットハンターであった。1882年の9月に太陽に接近してきたクロイツ族の彗星(セプテンバーコメット)をつぶさに観察した。そして多くの珍しい現象を発見したが、彗星も生涯21個の発見に成功している。 ...
ドノホウメダルとコメットメダル
この二つのメダルはよく間違われるが、性格も形も全く別ものである。ドノホウメダルは、戦前から長いことアメリカの太平洋天文学会から、新彗星の発見者に授与された。財源はアメリカの富豪、ドノホウ氏によるものであった。日本では古くから山崎正光、下保茂、岡林滋樹、 ...
関・ラインズ彗星の発見
立春だった、その日遅く仕事から帰ってきた私は、「只今」も言わないで中庭の物干し台にあがった。夜道を歩きながら見上げた高知市の空には見事な冬の天の川が輝いていた。 口径9cm。17xの小さなコメットシーカーを南天に向け、はるか南の鷲尾山の上に落ちる冬の天の川 ...
クロイツ族彗星の謎(3)
池谷・関彗星の曲 キューバのあるジャズの楽団に所属するホセ・M・カレヨは優れたサックスの奏者であるとともに作曲家でもあった。1965年9月に発見された「イケヤ・セキ彗星」は近日点を通過した10月下旬には、南よりのコースを辿りキューバでは非常によく見えた。ハバナ市 ...
クロイツ族彗星の謎(2)
大彗星の丈比べ クロイツ族彗星の「イケヤ・セキ彗星」は1965年の10月、近日点を通過してから最長40度の長さの尾を見せました。有史以来最も長かった尾の彗星は1843年に現れた同じクロイツ族の彗星C/1843 D1だったようです。添付した図によると、尾の実長は実に3憶2000万 ...