私は昔から、コスモスの花が好きです。赤や黄や、色とりどりの花が一面に咲くのが良い。1940年、岡山県の倉敷天文台では、コスモスの咲き乱れた天文台で「岡林・本田彗星」の発見がありました。そして1956年10月6日、高知市の観測所でクロムメリン彗星を発見した時には、私は1輪の青いコスモスの花びらを胸のポケットに差して観測していました。

 それから5年後の1961年10月11日の明け方、庭に咲くコスモスの花の上の物干し台天文台で、待望の「関彗星1961T1」を、発見しました。コスモスの花の美しさに誘われ、美しい星空を見ようという、リラックスした気持ちが、私をして発見に誘い込んだものと思います。

 観測中の姿は、なかなか写真で再現できないものですが、私を知るある画家がその姿を想像して、忠実に描いてくれました。観測中は何も考えずに、ただ一心にレンズの中の星の世界に集中しているだけです。無念無想というか、そうした環境の中に新彗星は突然現れるものです。低倍率広視のコメットシーカーの中に展開される星空ほど美しいものはありません。今でも多くの彗星たちがコメットハンターの発見を待っているのです。

(挿絵は、1961年10月11日午前5時。セキ彗星を発見した瞬間の姿。)
スキャン 1
にほんブログ村 科学ブログ 天文学・天体観測・宇宙科学へ
にほんブログ村