土佐には昔から「イゴッソー」という諺があります。イゴッソーの正しい解釈は難しいですが「頑固者」といえば分かりやすく、また真意に近いと思います。困難な彗星を発見する精神も、一種のイゴッソーかもしれません。
 今から遠く1827年にフランスのポンとガンバートが5〜6等級の彗星を発見しました。東京天文台の小倉伸吉博士が軌道を計算し、60年内外の周期を得ました。OAAのある天文学者は、これを”ハレー彗星並みの大彗星”と公言しました。ここらあたりから誤った解釈が、生じはじめました。
  OAAに所属するQ氏は、この彗星の周期を信用して、過去に幾つかの出現の記録を発見しました。それは望遠鏡のない時代の肉眼観測も混じっていました。光度5〜6等の彗星は肉眼では観測困難です。恒星なら何とか見えても、望遠鏡のない時代の人が先入観なしに発見することは至難の業です。

 この過去の時代を結んだQ氏の研究は外国にも紹介されました。ところが2012年になって、この彗星が出現したのです。ポンらの発見から実に185年経っていました。この事実によって、過去の彗星との同定は、音をたてて崩れました。全くの別物だったのです。これについて私はQ氏に問い合わせましたが、明確な返答はありませんでした。本人の公的な訂正はありませんでした。

 たとえ間違いだと分っても頑固に自説を通す。これが土佐でいう本物の「イゴッソー」の精神かもしれません。昔は土佐にはそんな人が多かったのです。それはそれとして、写真は185年ぶりに現れた”ポン・ガンバート彗星の素顔です。永い間、暗黒の宇宙の中を放浪していたとは思われないグリーンの美しい姿でした。

(2012.1.10. 18h12m-13m J.S.T Nikon D-700  T.Seki)
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