明治時代に高知県の在所村(今の香北町)の有光さん宅の庭に、珍しい「石質隕石」が落下した。最初に研究したのは高知市に住むアマ天文家の「正木さん」という方でした。戦前の事で、当時の土陽新聞には「嚇嚇の音、天地を圧する」とか、「36発の大砲をぶっぱなす音」とか言った大袈裟な見出しで報道されています。
 正木氏によると、落下した隕石は一つではなく、北の本川村にも同時に閃光と爆音を伴って落下したそうです。この現物は未だ見つかっていません。
 香北町に落ちた隕石は一時期、天からの授かり物として、土佐山田町の天理教が祭っていましたが、そのうち五藤斉三氏が現れて買い取ったそうです。当時の土陽新聞に「石を300円で買う大馬鹿者現る」という見出しで報道されました(五藤氏談)。いまなら300万円??というところでしょうか。
 隕石は立派なガラス張りのケースに収められて、長いこと東京世田谷の五藤氏宅にありました。私も何度か手に取って、その重さを確かめました。その後上野の科学博物館に鑑定のために貸し出されましたが、M氏によって無断で3分の一ほど切り取られたそうです。

 実はそれ以前の1950年頃、五藤氏と村山氏が高知市に来て、隕石に関する天文講演会を開きました。参加者の中で、むかし家に隕石が落ちてきたとかで、実物を見せ、(のちの高知隕石)意外な収穫がありました。豆粒くらいの世界最小の隕石?です。
 その後、五藤氏は香北町の落下地点に巨大な記念碑を建てて寄付しました。町を挙げての盛大な式典がおこなわれました。五藤さんはこの日、村が用意した昔の駕籠に乗って、山の斜面の有光さん宅での式典に参列したことを覚えています。私も参加しました。

(写真は東京、上野の科学博物館に陳列された隕石群。中央一番前の石が”在所隕石”)

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