ここ高知県には二つの隕石が落下している。
 一つは明治時代に東の香北町に落下した「在所隕石」である。もう一つは終戦の年の昭和20年12月、高知市の桟橋通の、民家に落下した「高知隕石」である。
 
 高知隕石は丸い小さな豆のような形で、直径は僅か9mm、世界最小とされている。落下直後、高知大学の沢村教授によって分析され、鉄の中にニッケルも検出され”世界最小の隕石”の折り紙がつけられた。

 この隕石は不思議なことに現在私の手元にある。1970年頃、沢村教授から頂いたもので、それ以後何か事あるたびに出品してきた。特に芸西天文学習館で天文の会のあるたびに、参加者に見せた。しかし隕石として疑問もあった。国立科学博物館のM氏は表面を研磨したが、隕石特有のニッケルが検出されなかった、とて否定した。

 隕石落下の現場で、ガラス窓を横から打ち抜いてきた、という穴をみた。直径2cmほどの穴が開き、ガラスが蜘蛛の巣のように四方に走っている。これを見た瞬間私は「ハッ」とした。隕石は鉄砲玉より速いスピードで飛びこんでくるので、普通はこの様な割れ方をしない。銃弾が当たったような小さな綺麗な丸になるのである。そして夕方であるにかかわらず、繁華な電車通リで、誰も光を見なかった。落下音もきかなかった。謎の多い「高知隕石」である。

 こうして原稿を書いているとき、机の抽斗のなかで「コトリ」と音がした。開けて見ると、そこには小さな黒い隕石が収まっていて、豆粒は、自分が盛んに隕石であることを主張しているような気がしてならなかった。「体は小さいが、ここに天下の隕石あり!」と。

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