いま太陽に接近して今世紀最大のホーキ星に発展しようとしているアトラス彗星に、内外で奇妙な噂が立っている。即ち光度の上昇が止まり、彗星の中心核が、今にも崩れそうな奇妙な形になってきた、というのである。このアトラス彗星は、大昔に、これと非常によく似た軌道を持つ彗星が存在し、これらは、何らかの親彗星から分かれて出来たものではないか?との説もある。それが、今再び分裂しようとするのか!?


 彗星の分裂劇は、何も珍しい現象ではない。1930年に発見された73Pシュワスマン・ワハマン3彗星は、約5年の短周期彗星であるが、その核がたびたび分裂した。分裂すると、それぞれの核にA.B.C...核と名づけ、夫々について軌道が計算されるが、中にはすぐに消滅していくものもある。

 今回のアトラス彗星は、分裂と共に暗くなっていくのか、あるいは分裂したまま予報の線に従って、大彗星に発展して行くのか?もし二つ、三つの大彗星が夕空に長い尾を曳いて棚引けば、これは正に空前絶後の出来事となろう。しかし、その可能性は縮小したと言わざるを得ない。これから近日点に向かって行くのだから、明るくなる可能性はないでもないが、その希望は縮小した。これからの天文現象に注目していただきたいと思う。

 写真はシュワスマン・ワハマン3彗星が分裂する様子を、芸西天文台の60cm反射望遠鏡で捉えた珍しいもので、上は2006年4月22日。下は翌日の撮影である。上の写真では核が細長くなって今や分裂寸前の姿。下はその24時間後。完全に2〜3個に分かれた。

(60cm反射望遠鏡+NikonF。フジプレスト1600.5露出)

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