今年2020の年の5月には、近日点を通過する二つの彗星があった。その一つは、近年まれな大彗星になるかと期待されていた「アトラス彗星」C/82019 Y4であり、最大満月の明るさになるかと期待されたが、近日点への到達を待たずに儚くも分裂崩壊した。
 もう一つのC/2020 F8(SWAN)であるが、近日点通過の5月31日には4等星になる筈だが、北半球では観測に適しておらず、次第に暗くなりつつあるとの情報もある。世間を「アッ」と言わせるような大彗星はなかなか出ぬものである。

 しかし、私の天文を始めた頃には沢山の大彗星が出没した。なかでも1962年の2月4日、アメリカのリチャード・ラインズ氏は、アメリカ・アリゾナ州の広漠とした砂漠の中、南天の「とも座」に8等級の彗星を発見。一方の私は人口の密集した高知市の古いアバラヤの屋根の上で同じ天体を発見した。面白い対象である。その彗星が近日点を通過する4月1日には、太陽に0.03天文単位と迫り、マイナス等級の明るさとして夕空に輝くことになったのである。当時は今と違って、天文人口が少なかった。しかし星の好きなアマチュアや専門家は、その壮大な現象を見逃さなかった。

 私がアルバムの中から発見した写真は、当時アメリカ.アリゾナ州.フラグスタフの天文台にいたE.リーマー女史の撮影したものだった。彼女は"彗星観測の神様”と呼ばれ、生涯69個の周期彗星検出のレコードをもつ。フラグスタフ海軍天文台の口径1mの反射望遠鏡で撮影した見事な写真が、彼女から贈られてきた。これは当時のコダック社が開発した天文用ガラス乾板「103a-E」で撮影されたもので、彗星の尾のなかのディテールが、極めてよく出ている。

(写真は1962年4月23日の”関・ラインズ彗星”で光度は5等級になっていた。)

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