三嶺の頂上で赤い夕焼空を見てから1ヶ月後のことである。今度は自宅観測台で、じっと明け方の星座を見つめていた。
東の地平線上に大きな体を乗り出してきた獅子座の一角に朦朧とした光の玉を見た。普段見慣れた位置である。そこには星団や星雲(銀河)は絶対にない事を知っていた。観測を始めてから12年目、永い経験がものを言って、遂に待望の新彗星と遭遇したのである。
位置を観測して、その日のうちに東京天文台に電報を打った。二日後に東京から確認の知らせと祝電がきた。しかし大きな喜びに包まれるはずの私の心は一抹の哀愁が立ち込めていた。それは発見に成功することによって目標(夢)が失われた、という寂しさであった。昔の剣豪が試合に勝った時に感ずるという、あの憂愁に似たようなものであろう。
そんなこととは関係なく、発見した彗星は地球に接近してきた。そして発見から約一ヶ月後の11月中旬には、0.1天文単位と迫り、一晩に30度以上も動いて南下した。その頃完成して間もない岡山天体物理観測所の188cm反射望遠鏡で撮影された。この時彗星コマの実直径を測定したら、その体積はなんと地球の20倍もあった。中心核は小さいが、ガスに包まれたコマは意外と大きいものであることを知った。
その頃の巷では「夜のプラットホーム」という歌が流行っていた。
♪ 星は瞬き夜深く 鳴り渡る なりわたる
プラットホームの別れのベルよ
さよなら さよなら 君いつかえる ♯
南半球の空に消えて行った「セキ彗星」。今度はいつ帰るだろうと軌道計算に着手した。しかしそこには驚くべき結果が待ち受けていたのである。


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東の地平線上に大きな体を乗り出してきた獅子座の一角に朦朧とした光の玉を見た。普段見慣れた位置である。そこには星団や星雲(銀河)は絶対にない事を知っていた。観測を始めてから12年目、永い経験がものを言って、遂に待望の新彗星と遭遇したのである。
位置を観測して、その日のうちに東京天文台に電報を打った。二日後に東京から確認の知らせと祝電がきた。しかし大きな喜びに包まれるはずの私の心は一抹の哀愁が立ち込めていた。それは発見に成功することによって目標(夢)が失われた、という寂しさであった。昔の剣豪が試合に勝った時に感ずるという、あの憂愁に似たようなものであろう。
そんなこととは関係なく、発見した彗星は地球に接近してきた。そして発見から約一ヶ月後の11月中旬には、0.1天文単位と迫り、一晩に30度以上も動いて南下した。その頃完成して間もない岡山天体物理観測所の188cm反射望遠鏡で撮影された。この時彗星コマの実直径を測定したら、その体積はなんと地球の20倍もあった。中心核は小さいが、ガスに包まれたコマは意外と大きいものであることを知った。
その頃の巷では「夜のプラットホーム」という歌が流行っていた。
♪ 星は瞬き夜深く 鳴り渡る なりわたる
プラットホームの別れのベルよ
さよなら さよなら 君いつかえる ♯
南半球の空に消えて行った「セキ彗星」。今度はいつ帰るだろうと軌道計算に着手した。しかしそこには驚くべき結果が待ち受けていたのである。


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