毎年新しい彗星が発見されると、まずその星の軌道が計算される。新彗星は今太陽に接近中なのか、あるいは離れつつあるのか。その途中で我々地球に近づいて明るくなるのかどうか?興味を持って計算し、その結果を見守るのである。

 その頃、本場のアメリカでは、まだマースデン氏は台頭していなかった。ロイッシュナー天文台のカニンガム博士が、古くから軌道計算に従事していた。イギリスではマートン博士が健在であった。日本では東京天文台(広瀬秀雄博士)が中心になってその役目を果たし、日本天文研究会の神田茂氏や、京都大学の古川、樋上両氏。それにフリーでは神戸市須磨の長谷川一郎氏(OAA)らが、盛んに計算合戦を繰り返していた。

 肝心の「関彗星」は私の軌道計算では、発見がちょうど近日点の通過中で、その後地球にかなり接近して放物線軌道をたどって、宇宙の彼方に消えて行く事になっていた。カニンガム氏の計算では770年の長周期楕円軌道を得ていた。私の計算では900年の周期となった。放物線に近い楕円軌道である。
 彗星は運行中に近くの天体の引力の作用(摂動と呼ぶ)を受けるので、必ずしも900年後に帰って来るとは言えない。軌道が双曲線に変わって、永遠に太陽系の果てに去って行くかもしれないのである。900年も待てないね。ふと友人が詠んでくれた、こんな詩を、思い出していた。

 −彗星− 
 永遠の瞬間を旅するもののこと
    何もかも海の彼方に泳いでいったよ
       ボロボロの貝殻を渚にのこして

 その頃、私は名勝「桂浜」の海岸を歩いていた。発見者としての浩然の気を養いたかった。どこに向かうのか、遠い水平線の彼方に一艘の白い汽船が浮かんでいた。

(石の斧に刻まれた古代ハレー彗星の記録・スロヴァキア)
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