日本で唯一の石鉄隕石と言われている隕石の奇怪な物語である。明治時代の冬の真夜中、高知県東部の香北町の上空に、突如として大音響とともに隕石が飛来した。当時の「土陽新聞」によると、そのただならぬ物凄い天変地異の様子が報じられている。「赫々の音天地を圧する」とか「16発の大砲の音響く」とかの物凄い表現で紙面を埋め尽くしているのである。

 最も隕石の落下は、ここ河北町の「朴ノ木」だけではなく、同時刻に50kmばかり西に離れた伊野町の山奥にも赤い火の玉が降った。隕石は二つに割れて落下したものと思われるが、この方は未だ発見されていない。

 在所隕石は落下後、五藤光学の五藤斉三さんが拾得者から買い上げて落下地点に立派な記念碑を建てた。そしてその5年後に五藤さんの多大な援助によって、芸西天文学習館が出来たのである。知事や五藤さん夫妻も参加して開所式が盛大に行われたのであるが、その夜遅く望遠鏡の調整をやっている私のところに正木と名乗る男が現れた。

 正木氏は隕石の落下した朴ノ木のすぐ近くに住んでおり、庭で隕石らしい奇妙な石を発見したという。そして見せられたのが写真の石である。ペン先と大きさを比較してあるが、隕石らしい重さは無かった。この石はその後、私が上京した時に五藤氏にとどけた。上野の科学博物館で鑑定されるという事であったが、その結果については聞けずに終わった。
 この謎の石は今もどこかで、人知れず光っていることであろう。

在所隕石


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