下の写真は私を中心にして、向かって右が村岡健治さん、左が門田健一さんである。お二人とも彗星研究の世界的な大家である。
 高知市の中心部に昔から”村岡カメラ店”があって私も出入りしていた。門田さんも中学生のころから、撮影した天体写真の現像に出入りしていた。ある日彼と店で会って、頂いたのが1975-6年のあの有名なウエスト大彗星の見事な写真であった。
 
 門田さんは日本の観測者をリードする彗星の観測者になった。また、村岡さんは、殆んど独学による軌道計算の大家として世界が認める実力者となった。村岡さんが軌道を計算した回帰彗星を、芸西で検出したこともあった。特に彗星の”非重力効果”について、独自の技能をもっていた。

 彼の家系は、どういうものか不幸にして短命であった。父親は30代の若さで、母は40歳台の若さで亡くなった。彼もそれを意識して、日ごろ健康について特に留意していたが、志半ばの50歳にして他界してしまった。もっと長生きして研究してもらいたいことが多々あった。
 
 彼が尊敬していたアメリカのバーナード博士の、100年前に発行された天体写真集をアメリカの古書店で入手したのは大手柄だった。今では世界に50冊くらいしかないだろう、と言われる貴重な資料である。今年高知市で開催される予定だった「彗星会議」で披露されるはずだった。「会場ではガードマンを雇わないといけないね」と言われるほどに貴重な資料を持っていた。  

 半世紀ほど前に私は「軌道計算の楽しみ」と題する5回シリーズの小著を発行した。村岡さんはその本を手始めに、コツコツと独りで勉強したが、先輩に長谷川一郎氏(理論家)や、実力者の、中野主一氏らがいて指導を受けたこともあった。とにかく本が好きで、彼の名刺の肩書には”古書評論家”とうたってあったのを覚えている。

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