私が小学校高学年の頃には、ハレー彗星は太陽系の遠日点の近くにあった。しかし1910年のハレー彗星の印象が物凄かった影響で、その頃の少年少女向きの小説に度々彗星が登場した。海野十三作の「火星兵団」なんかその最たるものであった。世界大戦前の、日本が海外に進出していた時期だったので、青少年による冒険ものが多かった。例えば、山中峯太郎の「亜細亜に立つ火柱」、南洋一郎の「南十字星の下に」なんかが、その代表選手であった。

 海野の作品の中には”モーロ—彗星”と言う大彗星が地球に衝突する運命をたどる。そして、地球の科学者が乗ったロケットがアメリカのアポロ計画より20年早く月面に降り立つのである。この海野の小説は、当時の毎日系の「少国民新聞」に連載されたが、毎日朝早く起きて新聞の配達されるのを待った。私が天文を始める動機の一つとなった科学空想小説だったのである。

 ハレー彗星は、過去地球に大接近したことはあったが、決して衝突することはなかった。小説の中の”モーロ—彗星”は、地球の科学者たちがロケットで火星に向かう途中で計算上は地球と衝突することになっている。しかし衝突すれば、何もかも御仕舞で小説は続かない。そんな時、モーロー彗星は月の引力の影響で(摂動作用)僅かに衝突を回避することになる。作者が科学者であったからこそ、こうした奇想天外な発想が出来たのである。
 1910年のハレー彗星は大接近して地球が尾の中を抜けた。晴れた青空をピンク色の縞模様が幾度も横切ったという。来る2062年の回帰では、地球とハレー彗星は真っ向から行き会うと、早くも予言する学者がいる。
 果たしてどんな光景が見られるだろう。それは夜空いっぱいの絢爛たるハレーか!? 
 私はまた叫ぶ。「ハレー彗星を見たいなら、もう40年生きよ!」と。

(写真は古代ハレー彗星の接近画)

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