1965年9月19日、静岡県の浜松と高知市で同時に発見した「イケヤ・セキ彗星」は、その1ヶ月後の10月21日、太陽面突入を図った。55年前の今日である。彗星は太陽面すれすれに半公転して、再び元来た故郷に帰っていくというもので“クロイツ群の彗星”と言われている。

 太陽に最も接近する10月21日の正午ごろ、土佐市の池幸一氏は特殊な暗室”池式投影ボックス”を発明して、一瞬であったが、近日点通過中の彗星の健在を確かめた。輝かしい内部コロナの中で、懸命に泳いでいるイケヤ・セキ彗星の姿を確認した。この時倉敷の本田氏によると、彗星は満月の数十倍の明るさであったという。本田氏も独自に彗星を捉えた。しかしその後太陽の背面にまわって見えなくなった。

 翌日の10月22日。私たちは須崎市の「バンダの森」に登って、日の出と共に上がって来る彗星を確認した。彗星は摂氏100万度の高熱に耐えた。そして、あたかも金星のようにぎらぎらと輝きながら、太陽が昇っても、なお白昼の空に輝いた。そしてその4日後の10月26日の朝、見事な長い尾を曳く彗星の姿を確認したのであった。

 写真は土佐市で池幸一氏が撮影したもので、近日点通過後の観測としては世界で最も早い貴重なものであった。尾の長さは約30°。頭部の明るさは1~2等星で大きく曲がったダストの尾が印象的であった。地上の明かりは約20km離れた高知市。

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