一幅の書も残っていない書家の「関琴堂」、その正体は私にはしっかりとつかめませんでした。本名は「関光恵」と言った。「琴堂」とは書道の上での雅号で、他に「雪峰」という芸名も持っていたと言います。

今から30年も前のことですが、風をこじらせて近くの総合病院にいきました。私の一家は古くからこの病院のお世話になっていて度々往診にも来てもらいました。一個人病院から最近改築して立派な総合病院になりました。待合室で順番を待っていると目線の少し高いところの壁に古い一幅の書が架っています。変色して悠に50年から、もしかしたら100年ほど経って居るのではないか、と思う古色蒼然たる額が、近代的な美しい部屋に逆らって却って眼についたのです。

「健康十訓」と題して人間の健康に必要な事柄が書き並べられています。今でも十分通用する事柄が100年も昔に、既に唱えられていたのかと、驚かされます。
しかしこれを書いた書家と、病院はどんな関係にあったのだろう、と考えさせられます。こんな古いものを大事に飾ってあるという事は、よほど何か重要な関係があったのでしょう。そう思って、最後の作者名を見たとき「ハッ」としました。「雪峰」とあります。これは「関琴堂」の事でしょうか?
 
母によると伯父は若くして肺結核を患い、この病院の院長のお世話になっていたという事です。その代償として、この書を渡した。病院では代々それを大事にして今日まで掲げてきたのでしょうか。100年間も。


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