1970年頃から、高知市の自宅の物干し天文台では、夜空が明るくなって観測がやりにくくなってきました。小望遠鏡的な明るい彗星はすべて高知市上町の自宅での発見ですが、それよりさらに暗い彗星や小惑星の発見に挑戦するため、東に40kmほど離れた、芸西村に天文台を構えました。これが、いまの”芸西天文台”の第一歩でした。
 
 移転した当初は空が非常に暗く、朝夕の黄道光は無論、真夜中の天頂付近に見える謎の「対日照」もありありと見られました。そうした神秘的な雰囲気の中で多くの観測や発見が展開されてきたのです。1984年、日本で最も早くハレー彗星を観測できたのも、暗い夜空と優秀な60cm反射望遠鏡のおかげです。
 しかし移転当初は、わずか口径22cmの自作の反射望遠鏡でした。これで15P/フインレイ周期彗星を検出しました。間もなく、やはり手作りの40cm反射望遠鏡に代わり、「ホンダ.ムルコス.パ.彗星」等、4個の周期彗星の検出に成功しました。

 標高120mの丘からの眺めは良好で、遠く手結山と、続く太平洋が見えます。高知市の自宅では見えなかったカノープスも海の上に高いです。ここでの観測の成果がモノを言って、1980年に、60cm反射望遠鏡を設置した県立の「芸西天文台」が出来たのです。そして、最初に迎えた遠来のお客さんが、かの76年ごとにやってくる「ハレー彗星」だったのです。ハレー彗星が、天文台のドームの上に輝いている頃には、連日数百人の観測者で賑わいました。こうして、様々な星と人間とのロマンが生まれたのです。


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