1962年、コメットハンターとしてスタートした私のところへ全国から多くのメッセージが届いた。天文の愛好者による激励の手紙も多かったが、中には天文学に関しては全くので素人で、慌ただしい都会の中で生活する人たちにとって、天文学は全くの未知の世界だった、という人からの手紙もあった。実際世間の喧噪や、煩悩を一切忘れ、ただひたすらに無限のかなたに新しい星を追い求める生活は、都会に住む若い人々に斬新な印象を与えた。そんな中で、東北のある町に住む高木澄子さんの手紙があった。

 彼女は双子姉妹の妹と言う事であった。非常に仲の良い姉妹で、何事をするにしても2人一緒でなくてはならなかった。したがって、もしどちらかに婚約者が出来たとしても独りで離れていくことはできなかったという。
 ある週刊誌で、私が桂浜の海岸を散歩している写真を見た。事の起こりはそこからであったが、彼女は生まれ故郷に近い野蒜(のびる)海岸の方が美しいといって姉妹で撮った記念写真を送ってきた。そこには確かに桂浜よりはるかにスケールの大きい海岸があった。しかし白い砂浜は、竜馬の立っている桂浜の方が、夢のように美しいと思った。
 こうして彼女との文通は長く続いたが、それは恋愛と呼ぶにはあまりにも冷静であった。

 こうして、いつの間にか20年の歳月が流れた。お互いの心の中には相手のイメージは次第に薄れていった。そして完全に忘れ去ったかと思われた時、日本を遠く離れた南半球の小さな孤島で、奇跡とも思われる出来事が起こったのである。

(桂浜の坂本龍馬の銅像の下で。中央にスミソニアン天文台のマースデン博士。その右に関)

名称未設定



にほんブログ村 科学ブログ 天文学・天体観測・宇宙科学へ
にほんブログ村