今月の26日には日本国内で皆既月食が見られます。月食は日食ほど学術的価値が高くないといわれていますが、久しぶりに奇怪な赤い月を鑑賞して下さい。
 夕方、月は欠けながら登ってきます。赤く見えるのは地球の大気を通った太陽光が強く影響しているからだと思いますが、まず地球の大気層に入ってから、完全に隠れるまでの色の変化にも注目して下さい。 

 思い出として1945年の終戦の年の12月、暗澹とした街の低い地平線上に、血のような真っ赤な色をした満月が昇ってきたことを覚えています。「あれはなに!?」と、町を歩いていた母が、頓狂な声をあげて指さしました。遠くの工場の黒々とした、屋根の上に輝くお化けの様な大きい月は、今でもはっきりと覚えています。その後の調査では、そのころの日本では皆既月食は発表されていませんでした。暦にぬけていたのでしょうか? 衣・食・住に困るような秩序のない終戦直後の事で、報道機関も月食どころでなかったかもしれません。
 
 それから約10年後、ある地方新聞に、「今夜月食あり、天文学者一人も知らず」という、ショッキングな記事が大きく出ていたことを覚えています。書いたのはある有名な天文学者ですが、本当に月食が起こったのか、そして誰も知らなかったのか?確かめることはできませんでした。
 1957年頃だったと思います。見事な皆既月食が長時間曇りなく見られて世間でも話題になりました。この時、山本天文台の野邑技官の観測では、その全光度を4等と目測しました。添付写真は、芸西の60cm反射望遠鏡で撮った皆既月食中の月です。月の固有運動のためにわずかにぶれていますが、焦点が2400mmありますから迫力があります。月食を撮影中、その傍らでホウキボシを捜索したことを覚えています。

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