1976年3月中旬、芸西天文台の森の上に輝いた近年最美の彗星であるが、残念ながらモノクロの写真である。オリオンの大星雲を並べたのは、彗星の美しさを想像してもらうためだった。東の森に彗星があがってきた時、まるで森の中が燃えているように明るかった。

 1744年3月、クリンケンベルグ彗星がスイスの山奥の幽翠な湖に、6本の尾の影
を映した情景を思い起こした。ウエスト彗星の3本の尾も奇怪である。この時から天文台の東側の谷を”幽霊谷”と呼ぶようになった。沼でもあるのか、時々水の滴り落ちる音がする。夏には火玉も見た。彗星と「人魂」はそっくりである。

(写真は85mmレンズで関撮影。トライX、D-19 現像)

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