昭和20年7月4日の高知市大空襲から、終戦の8月中旬までの間、疎開先の高知市米田での出来事である。夜になると、すぐ近くの「赤鬼山」の頂上付近に赤い火が灯るという。その光は山頂を徘徊するように動く。

村の人は「また灯っている」という。そして「呼んでいる」という。「あったかーあったかー」と叫ぶという。下から「あったぞうー」と答えると火は安心したかの様にプツリと消えるというのである。

これは、私たちが滞在中にあった出来事で、なんでも大昔、殿様から授かった大事な手紙を届ける途中で紛失し足軽が自害した。その武士の魂が赤い火となって無くした手紙を探して山を彷徨しているというもので、こんな話は「浦島太郎」の物語の様に、全国の多くの土地に伝わっているように思う。

私の滞在中は夏で、さそり座の赤い一等星、アンタレスが丁度、低い赤鬼山の頂上を見え隠れしながら運行していた。案外アンタレスや火星なんかの明るい惑星が、赤鬼山の頂上に灯る赤い火の様に見えたかも知れないと思う。しかし次に経験した出来事は、これらとは全く違う、得体の知れない恐ろしい出来事であった。

(写真は高知市米田、中ノ谷から見た赤鬼山)
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