私の父、「関亀寿」の故郷は高知市外の米田村にあった。今は高知市内になっているが、昔は市の西北部のかなりの田舎だった。その故郷で夏や秋のお祭りのある日には、よく父と見物に通った。
 途中で「赤鬼山」という低い山があって、その下を通り抜けると「中ノ谷」という狭い村があって、そこに父の故郷の農家がある。赤鬼山は親戚の家の庭からすぐ西に見えた。標高わずか100mほどの低い山だった。

 しかし、その赤鬼山が夏の怪談の出発点だった。夜中になると山の頂上付近に、タイマツの火
らしい明かりが見える。そして「あったかー、あったかー」と叫びながら、明かりは山頂付近を彷徨するというのである。親戚の家の人が大声で山に向かって「あったぞうー」と叫ぶと、明かりは安心したかのようにプツリと消えるというのである。
 この様な怪談や、伝説は全国に多くあると思う。そのくだりは昔、殿様から預かった大事な手紙を、家来が隣の村の武将に届けに行く途中で紛失したというものである。殿様の怒りにふれた家来は悲しくも打ち首になった。殿に忠実だった家来の魂は、今も落とした手紙を探して、山中をさまよっているという物語である。

 その夜は夕方から良く晴れていた。山上の松林の中に、たしかに赤い火が見えていた。それ
は星らしかった。いま想えば、さそり座のアンタレスか、あるいは殊のほか明るい木星だったのか。昔は夜空が非常に暗かったので、星の輝きが異常なまでに明るく見えたものである。

(写真は昔、中ノ谷で撮影した赤鬼山に沈む木星)

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