土佐には昔から沢山の”わらべ歌”があって、子供のころはよく愛唱した。

トンボトンボおとまり
   あしたの市で 塩こてねぶらそ

 これは塩市という有名なわらべ歌であるが「ねぶらそ」と言うのは、なめさせようという意味の土佐の方言である。
また「お月灘」は高知県の西部、幡多地方に古くから伝わる、全国的にも有名な、わらべ歌である。

 おつき灘桃色
    だれが言うたか 海女がいうたか 海女の口ひきさくぞ

 このわらべ歌はこどもたちによって「おつきさんももいろ、、、」とあやまって伝えられているようであるが、正しくは「おつき灘桃色」である。足摺岬に近い大月町が、その発祥の場所である。
 大月町では昔からサンゴがとれた。青い海の底が桃色に輝いて見えるというのである。当時の山内侯の殿様は幕府への献上を恐れて、口どめした。しかし、いつの間にかサンゴの事が幕府に知れ渡ったというのである。

 こうした”とさわらべうた”は土佐の山間部に100曲はあるといわれている。しかし、時代と共に次第にそれらは失われつつあるという。それを危惧した、郷土の作曲化の「武政英策」氏は、遂に決心して、それらの収集と保存に一生をかけた。録音機をもって、とさの山奥をまわった。ある時には老婆一人しか知らない”うす引き歌”があると聞いて土佐山村に行った。ところが100歳を迎えたという独り暮らしの老婆が一人知っているという。しかし「実際にうすをひかないとうたえない」という。そこで武政氏は急いで重い石の臼を調達して、悠長に歌ってもらったという。
 しかし、その貴重なおばあさんも、その1ヶ月後に亡くなったという。きわどいところで「うす引き歌」は残ったのである。メロディーさえ分かれば後はお手のもの、武政氏はこうして収集したわらべ歌に彼独特のピアノ伴奏を付けて完成させた。こうした膨大な彼の研究資料は、最近高知市に寄贈されたという。
 こうした業績から武政氏は、栄えある高知県文化賞を受賞したのである。

(写真は若き頃の武政英策氏)

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