作曲家、武政英策氏の収集した「土佐わらべ歌」は数十曲に及んだ。古くからの素朴なメロディに、立派な伴奏を付けて完成した幾つかの有名な曲が、NHK高知放送局の女性合唱団によって全国中継された。中でも「亀の子」という子守唄は可憐な旋律で、ギター1本の伴奏がいいという事になって、私が担当した。珍しいところでは、お箏や尺八も参加した。
 
 ♪ よーんべうまれた かーめのこー
    おとやんよー おかやんよー ♯
 
 足摺岬の人類未踏の洞窟から、満月の晩、生まれたばかりの子亀たちが、砂浜を通って親を探して海の方に這い出て行く情景をうたった子守唄で、高知県の西部では、明治の昔から歌われていたという。そんなメロディだけの素朴な歌が、武政氏の名編曲によって、立派な子守唄として、今に生き返ったのである。
 このほか、面白いところでは、豆狸(まめだ)という滑稽なわらべうたがあった。

 ♯ まめだが徳利持って酒買いにー
      こんばんわー  ♪

 「まめだ」とは、古くから土佐に伝わる人をだます豆狸の事で、流星の観測者に同じ名前の人がいたりして面白かった。
 しかし土佐のわらべ歌は無数と言ってよいほどに沢山作られたが、月や星座をうたったものは、まったくなかった。それは、わらべ歌ではないが、北原白秋の次の詩に現れている様な気がする。小学4年生の時、戦火の大陸に旅立った恩師の岡本先生が、最後に歌ってくださった童謡でもあった。(砂山)
 
 海は荒海 向こうは佐渡よ
   すずめ泣けなけ もう日が暮れた
      みんな呼べよべ お星さまでたぞ

 多くの子供たちは星の出るころには家に帰って過ごしたのである。

(クラシックギターに熱中した頃の筆者)

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