立春だった、その日遅く仕事から帰ってきた私は、「只今」も言わないで中庭の物干し台にあがった。夜道を歩きながら見上げた高知市の空には見事な冬の天の川が輝いていた。
 口径9cm。17xの小さなコメットシーカーを南天に向け、はるか南の鷲尾山の上に落ちる冬の天の川を探索した。「彗星を発見したい」と思って観測しているうちには、決して見つからない。眼も、心も一になって美しい星空に溶け込んだとき、突然発見が訪れるのである。

 朦朧たる妖しい天体が見えたのは真夜中の南天マイナス38度と言う、超低空だった。こんな低い天空で、他に発見する人はいないであろうと思っていた楽観は、突然緊張に変わる。遠くアメリカのアリゾナ州の砂漠の中で、この天体を見つめていた人がいたのである。それが「リチャード・ラインズ氏」だったのである。

 彗星は発見後急速に太陽に突っ込み、4月1日には近日点の通過で、太陽中心に0.03天文単位
とせまった。太陽にあまりにも近くて実際には観測困難であったが、その時マイナス2等に達したという説がある。
 写真はその時アメリカのアマ天文家が撮影したもので、まっすぐに伸びるイオンの尾と、雄大にややカーブしたダストの尾(中央)が写っている。

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