幕末の志士「坂本龍馬」の小惑星は、芸西に60cm反射望遠鏡が完成してから間もなくの1982年11月20日の発見である。(2835)Ryomaとして登録された。60cmの反射望遠鏡を北に向かって10分ずつ移動露出し、4回撮影した。周囲の星は綺麗に縦に整列するが、もし彗星や小惑星のように太陽系の移動天体があれば、ななめに映る。この様な手法を使って60cmで、過去1,000以上の小惑星を発見観測してきた。無事数年間の追跡観測が出来たのは、発見の番号をもらった223個である。中には彗星の如く朦朧としている天体もあったが、次に観測した時には完全な恒星状だったりして、彗星との識別が難しかった。しょっちゅう熱心に見張っていれば、必ずガスを噴射し、彗星としてのしっぽを出す。しかし、それはごく稀である。

 いまアメリカや南米チリの大望遠鏡で、小惑星として一旦発見された微光天体が、追跡中に、わずかな彗星活動が観察されて彗星としての記号を与えられているが、これも20等以下の超微光天体である。芸西で竜馬の星を発見した頃には明るい小惑星が多かった。一枚のガラス乾板(6x8cm)に5個もの新発見があったこともある。シーイングの悪い晩には、それらがすべて彗星の如く滲んで見えた。
 
 竜馬の星の流れ(固有運動)は整然として美しい。維新の新時代に人並み外れて、別の方向にどんどんと歩いていく姿は、いかにも竜馬らしくて好きだ。竜馬の生家は、ここ上町の私の家から歩いて2分くらいの近くの電車通りにあった。空き家になっていて、子供のころはよく勝手に上がっていって、友人たちと鬼ごっこをして騒いだ。「ほたえな!」という、竜馬の一括する声を聴いたような気がした。
 京の河原町で、北辰一刀流の使い手も、わずかなスキに、刺客の刃に倒れた。私の祖父のその親は、子供のころ家の近くの銭湯「亀の湯」で、よくチョンマゲ姿の竜馬を見かけたと言っていたそうである。竜馬とその妻の「おりょう」は、いま悠然と宇宙を駆けている。

(写真中央の斜めの星の流れが竜馬の星)

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