今から30年以上昔の芸西の夜空である。スバルの見える秋の夜空にボーッと円形の淡い光が立ち込めている。これはお天気の良い晩なら毎日のように見られた対日照の謎の光である。朝夕の黄道光よりかなり暗く、冬の天の川の最も暗い部分に相当する。位置は太陽を背にした真夜中の真南に限る。

 最も対日照は背景に天の川のある時には決して見えない。空気のよく澄んだ秋から冬にかけての、晴夜が良い。光芒はほぼ円形で、その直径は20度くらいであろうか?黄道の上にかぎる。これは、恐らく太陽系の中にあって無数に輝いている、微光の小惑星の集団の光であろう。しかし、この不思議な光芒があまり話題にならないのは、最近夜空が明るくなって、見える場所が少なくなり、自然と吾人から忘れられたのであろう。

これから夏になって、山や海に出かけることがあったら、この不思議な現象をぜひ観測してほしい。高知県では、室戸付近、梶ヶ森山、芸西付近、天狗高原、瓶が森山、足摺岬付近と、まだまだ暗い星空のある場所が多い。

 またこれとは別に、月のある位置から東西に60度離れた位置に幻の地球の第2の月があって、極めて幽かな雲の様な光芒として輝いていることが話題になったことがあった。力学的には存在するそうで、半世紀くらい昔に、当時のチェコ・スロバキア国の学者が、海抜2400mのタトラ山中(有名なスカルナテ・プレソ天文台のある山)で確認したことがあった。
 その話を聞いた日本でも有名な天文冒険家(I氏)が、石鎚山の四国一の高山に登って確かめようとしたが、2,000mの霊峰も、最早その淡い光芒を見分ける暗さに恵まれなかったと言う。
 そう!「イケヤ・セキ彗星」が太陽面に突入した時、昼夜を問わず、そして、その危険をいとわず高熱の太陽面を見張った男である。その後、彼は死んだが、その情熱は亡霊となって、今も深夜に天文台にやってくる。「見えたか—、見えたかー」と。

 (写真は1990年頃の真夜中に芸西で撮った対日照の光芒。センターが少し下にずれているが、これはレンズの周辺減光ではない)

スキャン 5


にほんブログ村 科学ブログ 天文学・天体観測・宇宙科学へ
にほんブログ村