昔の天文に関する珍しい絵図を見ていると、大彗星が長い尾を曳いて天を圧し、その下で多くの人が空を仰いで驚いている様子が描かれている。これらの多くは大昔から、76年ほどの周期で太陽を回るハレー彗星であると思われるが、なかにはハレー彗星も及ばない巨大な彗星が描かれていることもある。

 1786年頃パリのセーヌ川の上に輝くハレー彗星を、遊山気分で眺めているフランスの人たちの絵を見たことがあるが、実は有史以来、最大と思われる彗星は、同じパリの都会の上に君臨した。以前のこのホームページで、尾の記録的に長かった彗星3個を紹介したが、そのナンバー1だった彗星のスケッチを発見した。それは1843年の”太陽を掠める大彗星”である。彗星の頭は「おうし座」のはるか南にあった。尾はオリオンの「三ツ星」の下を通り抜け、その先端は「大犬座」のシリウスにまで達している。

 当時は写真はあったものの、天体を写すほどの感度は無く、作者は、実に克明に絵に描いていった。下界のパリの街並みなんかは、本物の写真かと思われるほどに緻密である。この大彗星は「池谷・関彗星」と同じように太陽のコロナの中まで侵入して行く”クロイツ族”のもので、近日点通過後に大彗星に成長したものである。

 この「クロイツ族」の彗星は、無数に存在し、その後1882年の9月にも出現した。いわゆる「セプテンバーコメット」である。この時、初めて有名な「バーナード」が登場して、詳細に観察し史上初めての写真撮影に成功した。これら「クロイツ族」の彗星は、太陽をめぐるその軌道上を、まるで”数珠繋ぎ”のように沢山存在して、太陽を襲ってくるが、小さいものは、そのほとんどが太陽のそばで消滅していると思われる。無数に散在すると思われるクロイツ族彗星の周期は、500年から1000年の間にその大半が存在すると思われるが、もともと一個の太陽に大接近したホーキ星から誕生したものと思われる。


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