深いガスがかかって、残念ながら星は見えなかった。1000m級の重畳たる山が亭々として連なる、ここ天狗高原の天文台は海抜1,400mの高所にある。いったん晴れたら、きっと恐ろしいばかりの星空が展開するであろう。ここには、五藤光学の45cm反射望遠鏡がある。
 
 チェコの有名な「スカルナテ・プレソ天文台」も、タトラ山中の1400mの高山にあって台長のベクバル博士や、台員のムルコス氏ら、数人のコメットハンターが大活躍した。それらの中には、パドゥシャコバや、ボサロバ等の、女性のハンターが二人いたことは驚きである。彼らは、氷点下30度の過酷な気象条件の中、電熱服を着て活躍した。そして沢山の彗星を発見した。皆、プロの天文家であった。
 彗星捜索のために開発されたという「秘密兵器?」も魅力的であった。あとで判明したことであったが、彼らが使用した双眼望遠鏡は、口径わずかに10cm。しかし特殊な広角の接眼レンズが開発され、実視野はなんと4度もあったという。きわめて澄明な星空の下、短時間に広い空の世界を数人が手分けして能率的に探索したのである。

 彼らの発見で、特に印象に残ったのは、1953年の12月に発見された「パドゥシャコバ彗星」であった。北欧では南の地平線すれすれであったが、11等星という暗さ。近日点距離が0.1AUよりも小さく、太陽接近と共に大彗星になる事が予測されたが、実際には近日点に近づきながら逆に暗くなっていくという、極めて珍しいタイプの彗星であった。近日点を通過してから誰もこれを見た人はいなかった。予報では肉眼的な大彗星になるはずであった。ただし、チェコで発見される前に、東京天文台が、この付近を偶然ブラシャー天体写真儀で撮影していた。乾板に10等級の彗星の影があった。

 このスカルナテ・プレソ天文台のコメットシーカーにヒントを得て、私が開発した口径87mm、17xという自作の単眼鏡で實視野は3.5度あった。この広角レンズに助けられて、それまで低迷していた私の捜索は一挙に3個の彗星を発見したのである。コメットシーカーは大口径よりも広角に限る。「イケヤ・セキ彗星」を発見したレンズは、一人の素人による試験的な3インチの手磨きレンズであったことを知って驚く人が多い。

 天狗高原天文台で、投影される美しいプラネタリウムの星で、獅子座が出た時、私はふと、発見した遠い昔の事を思い出していた。

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