巨大な台風13号の接近中の不穏な空です。しかし夏雲は沸き立って青空は美しく、間もなく台風が襲ってこよう、とは思えません。
 私が初めて彗星を発見した年には、同じ9月の中旬に山にのぼりました。折から台風24号(第2室戸台風)のやって来ている不穏な空気の中でした。高知県と徳島県の県境に屹立する「山嶺」で、海抜は約1900m。彗星発見に敗れた私は、自己と戦うような気分で雨の降る山道を登りました。

 ”ふすべ谷よりコース”を辿って渓流を約3時間歩いて、やっと三嶺の麓にたどり着きました。
あとは急坂を頂上にむかって、ひたすら登るのみ。夕暮れになってたどり着いた頂上では、一瞬赤い夕焼けが輝きました。そして、いつも美しいものを求めて、宇宙を探求していた自分の心が、翻然と蘇ろうとしていました。永い険しい彗星発見の道に敗れた私の心が、再び彗星を求めて輝いた瞬間でした。

 Comet Seki(1961 T1)を発見したのは、それからわずか1ヶ月後の事でした。新彗星は発見から1ヶ月後に地球に0.1天文単位と接近しました。一晩に30度近くも動いて南下し、南半球の空に3等級として輝きました。それを見ていたのは私一人? 後で銚子市の天体写真の名手「瀧田正俊」氏が、写真に撮り送って下さいました。また国立天文台では、できて早々の岡山県の188cm反射望遠鏡で富田弘一郎が流石迫力のある見事な写真を撮り、しばらく天体捜索部の壁に貼ってありました。この彗星こそ、眼視発見の見本となる、逆行の軌道をたどる彗星でした。周期は770年。

 ー自分で発見した彗星を自分で軌道計算するー 大した問題ではありませんが、アマチュアとして今までに
例が無かった珍事とて、神田茂氏が過大評価してくれました。彗星を発見する前の5年間は、私は東亜天文学会に属する軌道計算者でした。

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