1989年10月の事である。1986年の「ハレー彗星騒動」も一段落し、ここ芸西天文台では新しい微光の天体の捜索に余念が無かった。その10月のある日、60cm反射望遠鏡の極軸を確かめる為に、鏡筒を正確に天の北極の方向に向け、モータドライブを止めて10分間の露出を行った。
 正しい天の北極付近の微光星は、小さな点像に写っているのだが、その中に幽かではあるが朦朧と輝く天体を発見した。外観の様子から彗星の様で、早速資料を調べたら、それは1989年に発見されたWest-Hartley彗星(1983 E3)であることが判明した。幽かに朦朧としているのは、彗星独特のイメージである。彗星は、この年、地球に接近しながら天の北極点を正しく掠め通ったもので、極めて珍しい例である。

 小さな矢印で示された彗星は、約18等。比較的早い速度で通り抜けたが、正しく北極点であるために
日周運動の影響を受けなかった。このころ、もう1個の彗星が、やはり北極点を正しく掠めたが、もしかすると同じグループのものであったかも知れない。
 天体写真儀は、60cmクラスになると、多くの観測対象に出遭えるものである。

 (写真の中の左下の輝星は北極星である)

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