山内家に伝わる天体望遠鏡で、実際の宇宙をのぞいてみたかった。今から200年も昔に造られたレンが、、どのような天体を見せてくれるのか?しかし山内家に伝わる宝物を簡単に持ち出すわけにはいかなかった。

ところが一つのチャンスが訪れた。宝物館の管理人が芸西天文台の講師である岡村啓一郎氏と小学校の同級生で、望遠鏡の回転部に不具合があり相談に来たのである。早速、天文台の工作室で修理することになり、その結果として観測会が開かれることとなった。天文台の講師と宝物館の関係者、それに天文台の見学者との十数人によって、ついに武家の望遠鏡が宇宙に向けられたのである。

時は1985年の暮れが近い12月末のある日。望遠鏡は折から近日点に近づきつつあるハレー彗星に向けられた。どんな映像を見せるか?正に緊張の一瞬であった。

「見えた!」
レンズは青の強い色彩だった。ハレー彗星の核を見事に捉えた。そして不思議な第二のコマまでキャッチしたのである。

私たちは彗星の尾の中に見たコマを「容堂のコブ」と名付けた。無論正しいコマではないが、武家の望遠鏡による世紀の観測会に、彗星が少し興奮して見せたポーズだろうという事になった。しかし星像は、かって見たことのなかったような尖鋭さであり、青の断然強い映像であった。ここに珍奇な世紀の観測会が成立したのである。

(写真は1985年12月31日のハレー彗星と尾の中に見えた異常)

img084
にほんブログ村 科学ブログ 天文学・天体観測・宇宙科学へ
にほんブログ村