新彗星の発見者には、戦前から永きにわたって、アメリカの太平洋天文学会からメダルが贈られた。直径60mm、厚さ10mm位のブロンズ製の「ドノホウメダル」で、表面には美しい彗星をデザインし、裏側には天文学界と発見者の名前を彫り込んである。
 日本では戦前には下保茂、山崎正光、本田実、岡林滋樹の各氏。それにアメリカ在住の長田政二氏らがそれぞれの発見で獲得してきた。アメリカの富豪、ドノホウの寄付によるものであったが、約半世紀続いたメダルも、戦後は中断された。
 
 1970年頃になって新しく、コメットメダルが同じ太平洋天文学会から授与されるようになったが、これは新彗星の発見者にとどまらず、彗星の研究に広く貢献した人も対象になった。
 第一回目は、医師であり、彗星の優れた位置観測者だった、英国のウォーター・フィールド博士が晴れの受賞をした。第2回目は日本に来たが、3回目はヨーロッパのある軌道計算者がもらった。ある彗星の再発見のための、長い期間の摂動計算が評価されたものだった。その後何回か続いたが、これも資金が尽きたのか、5年ほどで終焉を迎えた。
 
 コメットメダルはその大きさもデザインも似ているが、ドノホウメダルに比べて非常に少ない珍しいメダルである。日本にただ一つのメダルは、高知市追手前の科学館「オーテピア」の一般展示室に陳列されている。

(写真は1940年、当時、鳥取県の本田実氏に贈られたドノホウメダルで、本田氏の実家の納屋から最近発見された。写真は鳥取市の多賀利寛氏の提供による)


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