本田さんがカラーで撮影して下さった「関彗星1961 T1」は、発見後次第に地球に接近してきて明るく大きくなった。そして10月の下旬には0.1天文単位と地球に大接近し、満月の大きさとなって一晩に30度以上も動いて南下した。あまりにも急速な運動だったために一旦見失ったが、南天で3等級になり肉眼星になったところを、銚子市の天体写真の名手、瀧田正俊さんが、見事にキャッチしてくれた。視直径が30分角の円盤像で尾は見えなかった。
 
 その後再び北上してきたが、光度は10等以下に落ちていた。そのころ私は自宅の”物干し天文台”で最後まで眼視で追跡した。発見し、観測し、そして軌道計算まで自分でやったので満足であった。私の軌道計算では900年ほどの周期となったが、こうした長周期の彗星は、木星をはじめとする惑星たちの摂動を受けると必ずしも900年後に帰って来るとは確言できない。はるか太陽系の彼方まで飛び出していくかもしれないのである。
 嗚呼、永劫の中の一瞬の出逢いなのである。私の古い友人が、その話に感動して、こんな詩を読んでくれた。

 彗星ー 永遠の瞬間を旅するもののこと
   何もかも青い宇宙の彼方に泳いでいったよ
        ぼろぼろの貝殻を渚にのこして


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