今回添付した写真は、発見後急速に接近してくる関彗星「1961-T1」の姿です。同年の11月、銚子市の天体写真の名手で、歯科医の「滝田正敏」氏が撮影しました。また東京天文台の堂平観測所の大型望遠鏡のファーストライトとなりました。
 そしてアメリカ、フラグスタフ海軍天文台の、E.リーマー女史から、発見当初の尾を引いた見事な写真が送られてきました。この写真は東亜天文学会の機関紙「天界」の表紙に飾られました。

 さて、彗星は毎日見かけ上ほとんど動かずに、どんどんと大きくなってきます。明らか
に地球に接近して来るのです。これからの軌道はどうなるのか? 不安を感じた私は、早速に彗星の軌道を計算してみることにしました。自分で発見した彗星の軌道を発見者自らが計算する。これは、ごく特別なプロを除いて、前代未聞の事だそうです。それまで東亜天文学会の会員として、小惑星の軌道や、彗星の位置予報を計算していた私は、その技術を生かして、挑戦してみることにしたのです。
 軌道計算は彗星を最初からパラボラ軌道と決めて計算する比較的簡単な方法もありますが、私は19世紀の大数学者「ガウス」の開拓した一般軌道の計算法に基づいて計算を始めました。そこでまず大きな難関に直面することになったのです。
 彗星や小惑星の軌道計算は、まず天体までの距離(天文単位)を知ることです。過去3回以上の観測が得られると、それからガウスの4次方程式を解いて天体までの距離を知るのですが、それが、とんでもない難関で、4通りの解が得られるのです。ただし正しい解は一つしかありません。その得られた四つの解から、一つひとつ彗星の位置予報を計算して実際合っているかどうかを確かめていくのです。
 それには少なくとも数十日の時間を要します。まごまごして居ると彗星は地球に接近しドカーンと、ぶつかって世界の終わりがやって来るかもしれないのです。発見からまだ10日も経っていません。その危機を知っているのは世界中でたった一人、私だけなのです。読者諸兄姉にはその気持ちがお分かりになるのでしょうか? 世界の紛争も、国内の政治的な事件も、個人同士のいざこざも、何もかも吹っ飛んでしまうのです。相手は地球の20倍もの体積のある彗星の事、もしぶっつかったら、地球は無数の小惑星の様な破片として、太陽を周回する運命となるでしょう。ああ神よ助けて下さい、、、、、。心の底から敬虔な祈りがこみ上げてきました。

 ここで火星と木星の間にある夥しい小惑星の成因がわかってきたではありませんか?
そうです、多少早計かもしれませんが、小惑星は一個の立派な固体の惑星が分裂して出来たものとの説も成り立つのです。小惑星群の輝きと見られる春の夕方と秋の明け方に見える黄道光の輝きも、小惑星の群れが、この部分にかたまって運行しているからなのです。沢山の小惑星を発見していた頃も、その発見の季節は、秋から冬に偏っていました。(つづく)

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