南国高知では、冬は長い晴天が続きます。空は限りなく澄んでホウキ星がやってきそうな気配です。1962年の立春の日に発見した彗星も、ちょうど今日の様な美しい空でした。格別「発見しよう」という意識は無く、コメットシーカーと共に自然と美しい星空に引きずり込まれました。星を愛する心があってこその発見です。発見したあとで「嗚呼、今日も何も考えなかったなあ」と自分の心を顧みるのです。
 そのためには、コメットシーカーのピントは最高でなくてはなりません。特に双眼望遠鏡で見た彗星は、無限大の星空に、へばりついている星団や星雲たちと違って、近くでの立体感があります。これぞ双眼望遠鏡の魔力です。

 1946年から1959年までの約13年間に大活躍した「スカルナテ・プレソ天文台」のムルコスを始めとする捜索者たちはソメト製の口径10cmの双眼望遠鏡を使っていました。口径はやや小さいのですが、実視野は何と4度もありました。海抜1400mの山上での透明な大気の中で、数台の双眼鏡が縦横無尽の大活躍をしました。我々に取っては、正に秘密兵器でしたが、1990年頃、ここの天文台で国際天文学連合の総会があったとき、その会場の入り口で数々の彗星を発見した、双眼望遠鏡が「あいさつ代わりに」立っていました。そのそばにはサンダルをはいたミニスカートの若い案内ガールが立っており、その美しい女性の姿から、とても雪山の山上で活躍した厳しい様子は、伺えませんでした。
 
 双眼望遠鏡を持つことは、我々コメットハンターの夢でした。1967年の2月にヘルクレス座に発見した「第2関彗星」は11等級の暗いものでした。普通なら星雲や星団と区別するのに苦労するところでしたが、その立体感から一見して彗星と認めました。Nikonの12cm双眼望遠鏡が威力を発揮したのです。

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