毎年、秋がやってきて、澄んだ青空が続くようになると、初めて彗星を発見したあの頃の感興を思い起こします。それは1956年の10月6日の朝でした。午前4時。東の空を登ってきた「しし座」を捜索中、獅子の後ろ足に当たる場所に、突然10等級の彗星を発見しました。

これは1928年、南アのホルベス氏や日本の山崎氏の発見した「クロムメリン彗星」で、その日から28年ぶりに回帰したものでした。新彗星ではありませんが、とにかく最初の記念すべき発見で、私の上町の観測所が内外から注目されるようになりました。

写真は、1945年7月の空襲で、廃墟となった工場跡に造られた観測台で、もともと製紙工場の用水タンクでした。この場所で、口径15cmの反射望遠鏡を携えて宇宙に向って苦闘しました。あの頃の冬の寒さは、今も体の一部に残っています。

小屋で観測をしていると、午前5時に必ず牛乳屋の自転車が通って行きます。かごの中で、コチコチというビンの触れ合う音を聞くと、余計に寒くなります。おまけに私のいる小屋の中は冷たい水だった!

思い出しました!1948年の「日食彗星」は朝起きの早い牛乳屋でないと見られないので、アメリカでは”牛乳屋さんの彗星”と呼ばれました。

(写真は、彗星発見の希望に燃えていた20歳の頃。後ろが水槽だった観測小屋)

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