その朝、彗星らしき天体を発見して5時間後、私は再び中庭の観測台に立った。そして、手製のコメットシーカーと共に写真を撮った。しか私の心の中は動揺していた。イソゲナ天体望遠鏡に新天体らしい光芒が影を落としたのだ。世界中には、大小様々な望遠鏡が、新しい天体を求めて活動している。よりにもよって、土佐の高知の上町の施設に新彗星がやって来たのだ。
 「こんなことがあって、いいのだろうか?」
 その日の朝の発見は全く信じられなかった。しかし心は激しく動揺していた。

 午前3時から、暁の東天を捜索していた。午前4時半になって、東の空に登ってきた「しし座」の一角に朦朧とかすんだ彗星らしい光芒を見た。8等星である。しかしイメージはごく小さい。無論見慣れたノルトン星図にはない。多くのハンターは、これを普通の恒星と見まちがえた、という。
 発見電報は東京天文台と倉敷に発信した。倉敷の本田さんには高校生のころ、初めての手紙を差し上げてから、実に11年ぶりの事であった。本田実さんは、得意の天体写真術で、”セキ彗星”を二日連続で写真に収めた。ところがその翌日、実に不可解な現象が起こったのである。

新彗星発見5時間後の関と9cm手製のコメットシーカー

名称未設定


にほんブログ村 科学ブログ 天文学・天体観測・宇宙科学へ
にほんブログ村