フォーレの作品に「夢の後に」と言う名曲があった。セロの独奏であったとおもうが、夢をみたあとの複雑で、そしてすがすがしい気分を弦は良く表現していた。
 大昔、ここ高知市上町の夕空に突然蜃気楼が輝いた。広い練兵場を、馬に乗った騎兵が盛んに駆け回っている光景で、すぐに消え、日没後の普通の風景に変わった。
 太陽が二つあるように見えるが、右の方に見えているのが本物の太陽で、左の薄い雲間に幽かに虹の如く輝いているのが偽の、いわゆる幻日である。

 蜃気楼の見えた日に輝く星空は特別に美しかった。当時は口径15センチの反射望遠鏡
を駆使して夕空を中心に彗星の捜索を行った。彗星の見つからない空を10年間探し続けて沢山の星団や星雲の位置を覚えた。新発見こそすぐにはなかったが、発見するにあたっての大切な星団、星雲の位置を記憶して行ったのである。もはや、星図を見る必要はなかった。

(写真は1980年頃、高知市上町の自宅の屋上から見た蜃気楼の後の幻日)

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