1961年10月11日(日本時間)に発見された”セキ彗星”は、その翌日、先輩たる倉敷天文台の本田実氏によって確認されました。直ちに東京天文台から世界の天文電報中央局のある、デンマークのコペンハーゲン天文台に打電されたのですが、彗星の動きが遅遅として進まぬのです。発見から数日たって、同じ望遠鏡で覗いたとき「ハッ」としました。彗星の形が大きくなり、輝きが断然増しているのです。

(彗星が近づいて来る!!)私は咄嗟にそう悟りました。(もしかして地球と衝突!)。関彗星のコマは地球の20倍もあります。(もし衝突すれば世界の終り!?)まさかそんなことはないでしょうが、(これは大変なことになるかもしれない。早く彗星の軌道を計算して確かめなくてはならない、そして世界に情報を送るのだ)と、その後の各地での精密位置観測を使用して、自ら軌道計算に取りかかったのです。

彗星や小惑星の軌道計算は、その数年前から勉強してある程度に熟達していました。発見前の私は軌道計算者でもありました。(彗星を発見して、自ら軌道を計算してみたい!)アマチュアとして世界でまだ誰も到達したことのない、この二刀流の世界にあえて挑戦しようと旗を挙げた私は、その軌道計算に没頭することとなったのです。

当時はパソコンがまだ天文の世界に応用されておらず、すべてが対数計算を利用した手計算です。B4の計算用紙にぎっしりと数字を書き込んでの計算。自室のなかで、誰とも会わず、孤独の中に数日を要して計算用紙が10枚ほどに達した時、やっと”セキ彗星”の軌道要素が浮かんできたのです。
(結果や如何に?)痩せて疲労困
憊した私の瞳に映った計算の結果は、実に驚くべきものでありました。

(写真は当時の軌道計算の一枚。これまでに、この用紙が高さ50cmほどに達するまで天文計算した。)

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