まる三日を要して、軌道を計算した結果は次の通りです。彗星の近日点通過は1961年10月10日の24時(世界時)で、その5時間後に高知市で発見していることが判明しました。彗星はその後、どんどんと地球に接近して、11月15日には地球に0.1天文単位まで接近することが分かったのです。その頃には、一日に16度も動いて南下して、うみへび座に輝き、その後は日本の空から消え去ることが分かりました。周期は760年です。

 0.1天文単位とは、太陽から地球間の平均距離の10分の1にあたります。彗星も当然、大きく明るくなって、予報では3等級でした。11月12日の朝でした。自宅の観測台からコメットシーカーを向けると、そこには、まるで風船を膨らましたような彗星がありました。しかし、この時代には天体写真を撮影することが至難で、天文人口も少なく、実際にこの素晴らしい姿を見た観測者は、ほとんど居なかったと思います。ただ一人、千葉県の銚子市で活躍する天体写真家の瀧田正俊氏が、地球大接近中の彗星の貴重な姿を撮影して送ってくれました。

1966年の5月、拙著「未知の星を求めて」の出版記念会が、東京、千鳥ヶ淵
のフェアモントホテルであった帰り、私は銚子市を訪ねました。そして瀧田氏のお宅の門前に行って、あの時のお礼を述べようと思ったのですが、歯科医のお忙しい仕事の事を思って、ついに諦めました。結局それが、最後の面会のチャンスでした。犬吠埼の海は良く晴れていました。

(写真は1961年11月中旬、ウミヘビ座を南下中の関彗星。瀧田正俊氏提供)

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