土佐湾に落ちていく満月の情景です。芸西天文台で観測しながら、この美しい風景があるからこそ、長い過酷な天体観測に耐えられるのです。土佐湾の彼方には手結山が見えています。海岸線は、さらに西に長く伸びて高知市を通り、いずれ足摺岬に到達します。

 月没とともに夜明けの薄明が始まります。それに挟まれた、ごく僅かな暗い時間が、彗星発見の時間帯です。高知市からはるばると30km以上の道のりを、そのわずかなチャンスに期待してやってきた。その熱心さこそが新天体発見の条件です。「何も見つからなかった」ほのぼのとして明けていく空虚な夜空を、ああ何十年眺めて来たことでしょう。まれにみる新彗星発見の狼煙〈のろし〉は、こうした不可能な条件の中から、立ち昇った奇跡なのです。


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