もうずいぶん昔になるが、静岡県を旅した時、清水市の海岸で、天女の羽衣がかかったという松林を見たことがある。「なるほど」と思わす美しい松林だったが、「天女」と言えば、私にも忘れられない思い出があった。

 時はあたかも太平洋戦争勃発の少し前の、昭和12年ごろだったと思う。有名な歩兵44連隊のある高知市朝倉の広大な練兵場の上空で、落下傘飛び降りの実演があるという。まだ小学生になったばかりの私は、物見高い父に連れられて見物に行った。広大な練兵場は黒山の人だかりだった。予定より1時間ほど遅れて、広島県の呉の基地から一機の複葉の飛行機が現れた。群衆から大きなどよめきと、拍手が起こった。小さな飛行機は、しばらく群衆の上を旋回していたが、やがて青空が「パッ」と光ったと思ったら白い落下傘が開いた。

 しかし落下傘は紐が絡みついて半開きの状態で、急速に落下してきた。「あぶない」とどよめく観衆の上空百米でやっと全開し、目的地より50米ほど離れた地面に着地した。多くの観衆は安堵の胸を撫でおろしたが、落下傘を操縦して無事着地した人物が、若い女性であったことを知って更に驚いた。確かロシアの宇宙船で2度目に飛行した「テレシコワ」さんも女性であったと思うが、いざとなると、女性にはこうした強い精神力があるものだと思った。我々のやっている彗星捜索の世界でも、やがてそうした偉い女性が現われるかもしれないと、期待している。チェコ スロバキアの標高1400米のタトラ山中で、私と同じ6個の新彗星を発見したコメットハンターは若き女性であった。冬は氷点下30度の激寒の中で独り頑張ったという。


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「芸西の60cm反射望遠鏡のそばでくつろぐコメットハンターの関勉」
こうした何気ない休息の中に、ふと観測の名案が浮かぶことがある。



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